その5
 9/5よりベル・オーブ、デリリウムカフェ全店にてアース・モンクの提供を開始いたします。
もちろん日本初登場ですが、私はこのビールに思い入れがありますのでしっかり説明したいと思います。

世界一の醸造家となったストライセ醸造所ウルバインのはなつオールド・フレミッシュブラウンエール「アース・モンク」

アース・モンク
2008年に世界の二大ビアレィティングサイトRatebeer.comとBeeradvocate.comにて
彼らは世界一の醸造家の称号を得ると共に彼らの醸造するブラック・アルバートがウエストフレテレンを抜いて宇宙一のビールと称された。

そんな2008年の2月に私とストライセ(De Struise Brouwers)は出会った。つないでくれたのはセント・ベルナルデュス醸造所のマルコ。
詳細は以前のこちらのブログ1ブログ2を見て欲しい。

元々パナポットに興味があり、マルコの紹介によって彼らと出会ったのだが、
すでに多くのベルギービールを飲み尽くしていたと自負していた私はストライセにて衝撃を受けた。
先程のブログを見ればわかるが、パナポットに続いてブラック・アルバートのマグナムに始まり様々なビールが私と古城戸に提供されたが。その中で最も衝撃をうけたビールの一つがこのアース・モンクAardmonik(蘭)/EarthMonk(英)だ。
正直自分がまだまだビールをそしてベルギービールを理解出来ていない事を教えてくれたビールでもある。

私はこのビールを飲んだ瞬間に醸造家のウルバインにお願いした。
「ぜひこのビールを日本に輸入させて欲しい。絶対に大切に扱うから。」

彼は私に握手を求めて「ありがとう、喜んで」と言ってくれた。その瞬間、本当にうれしかった。

しかし次の言葉が、、
「これから新しいバッチを醸造するので2、3年待ってね。2年に一度小瓶を5,000本ほどボトリングするだけだから。。」

そこから私の戦いも始まった。ストライセ醸造所のビールには世界中が注目し、私と同じような世界中のビールを愛しに愛する輸入元がその希少なビールを分け合っているのが実情だ。
少しでも連絡が遅れてしまえば、このようなビールはもう手に入らない。
私は年に3-4回ベルギーを訪れてはストライセを訪問し、アース・モンクの状態を確認した。正直ここまで手のかかるビールなのかと勉強にもなったし驚いた。
ストライセにも本当にしつこく電話もメールもして情報を交換した。そのおかげで彼らとすぐに打ち解けたし、一緒にビールを作るまでにもなった。
そしてフレンチオーク樽に寝かせ始めて2年以上やっとボトリングを始めるという連絡をもらった。

アース・モンク

実は私自身、このビールに非常に似たアロマを感じ取ったビールがあった。
そう、それは約20数年前のリーフマンス・グーデンバンドだ。みなさんもリーフマンス・グーデンバンドをお飲みになった事があると思う。
かの評論家マイケル・ジャクソンが愛し、そしてブラウンビールの代表として紹介したビールでもある。
私がリーフマンス醸造所と輸入の取引をしている際に当時のリーフマンス・ブルワリーズは20年もののヴィンテージ5,000本程をベルギー国内を中心に出荷し始めてしていた。
実際はブルージュの名店「ブルージュ・ビエールチュ」でもたったの14€でこの大瓶が売られてもいた。私はここで一本とリーフマンスから特別にもらったビール2本をその場でいただいた事がある。その味わいの前にアロマからして現在のものとはまったく違うものであった。フランダースブラウンビールは熟成タンクで寝かせているのがフランダースレッドビールと違うというが、
ボトルを開けた瞬間から樽の香りがあたりを包んだのだ。そういえば、リーフマンスの古いラベルには樽の絵がある。そうかと感じたものだ。もちろん現在のグーデンバンドも秀逸だが、現在のグーデンバンドにない非常に複雑で繊細、大胆な味わいは似て非なるものであった。

話が戻るがこの2年に一度作られるというアース・モンク。私が2008年に飲んだものは3度目のバッチだった。最初のバッチは瓶内発酵がうまくいかなかったと聞くが、
このバッチには私が飲んだ20年ヴィンテージのリーフマンス・グーデンバンドを連想させる、そして以前のフランダースレッドビールやブラウンビールがどのような者であったかを再認識させてくれるビールだった。名前の通り、アースとはこのビールから感じる木、そして草花、ペッパーやナッツなど大地、まさに地球の香り。そして彼らがビールを作るフレテレン、オーストフレテレンは
石を投げれば届く程近いと比喩しているウエストフレテレン(セント・シクステュス修道院 世界一のビールと評されるウエストフレテレンを醸造)がある事からアース・モンクと名付けられた。
これはもはやビールの概念を超えている。ワインなのかビールなのか?それとも。そんな事は実は作る側からすればどうでもいい事なのだが、考えてしまう。しかし答えも出ない。

今回の4度目のバッチ アース・モンクIV 2008はフレミッシュ・ブラウンエールを醸造後、生のチェリーを加えてさらに少なくとも2年はオーク樽にて熟成を続けた酸味の強い古いバッチを1/3と新しく醸造したばかりのものを2/3ブレンドして作られた。そのためまだボトリングされたこのビールは若くこれからの瓶内二次発酵が重要となる。
すでにチェリー、バルサミコビネガー、ショコラ、湿った黒土を感じさせる香り、そして
味わいはパッションフルーツやウッディー、キャラメル、ショコラ、オレンジやオレンジの皮のような複雑なアクセントを手に入れている。
しかし二つのバッチがブランドされたばかりのこのビールはこれから作る複雑なアクセントをこれからさらに手にしていくのは間違いない。醸造に3年近く時間をかけてもこれからのビールなのだ。
このビールはただ季節限定で一度作っているわけではない手間暇がかかり過ぎるために特別醸造となったしまうだけだ。多くの一回限りのビールが存在するが、これほどの一期一会のビールはほぼないと断言できる。
アース・モンク

実は今回、執念で全ロットの数分の1の量を日本というか私達に譲ってもらった。
すが○さんにはそんな事したら、世界中のビールファンが飲めなくなるとお叱りをいただいたが(笑)。す○やさん許して下さいねw
ベル・オーブ、デリリウムカフェにいらしていただくお客様にどうしても提供したかった。ただレアだと言いたくなかったし、熟成も楽しみたいじゃないか。
世界で一番このビールに執念を燃やしたのはこの俺だ!と本気で思っていますから。

私は西フランダース州は
ウエストフレテレン、セント・ベルナルデュス、デ・ドレにストライセ、元々はデ・ランケもそう、世界中の醸造家の尊敬を集める醸造所が集うビールの天国だと認識している。
言い過ぎではなく、ビールに見せられた人間であれば間違いなく訪れなければならない場所ではなかろうか?
私もそのビールに魅せられて人生の変わった1人だ。この場所をいつも訪れるたびに心が踊る。

ぜひ皆様、このビールが飲める9/5。私はベルギーにいますが、帰国後このアース・モンクで一緒に乾杯(フゾンテ)しましょう。
その瞬間、3年半のこのビールに対するすべての努力が報われる気がしています。そのために頑張って来たんで。